【レビュー】Sony WF-1000XM3、ノイズキャンセリング搭載の完全ワイヤレスイヤホン

sony-wf-1000xm3-reviewイヤホン・ヘッドフォン

ノイズキャンセリングを搭載した左右独立型の完全ワイヤレスイヤホン「Sony WF-1000XM3」を購入したので、実機をレビューしていきます。

最近のソニーオーディオ製品はヘッドフォン「WH-1000XM3」の高音質と高いANC性能で評価されており、筆者も気に入っている製品ですが、今回レビューするWF-1000XM3はTWS(True Wireless Stereo)のイヤホンで、このカテゴリでは本格的なANCを搭載した初の製品として登場しました。

現状ANC搭載で高音質なTWSイヤホンと比較になるとAirPods Proとの一騎打ちになるのですが、両者比較してみて良いところ、気になるところがいくつか見えてきたのでメモしておきます。

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Sony WF-1000XM3 レビュー

Sony WF-1000XM3は、2019年7月に日本でも販売が開始したBluetooth・ワイヤレスイヤホン。ソニーの型番的には “WF” の付く型番が左右独立型のワイヤレスイヤホンとして現在リリースされていますが、WF-1000XM3はその最上位モデルです。

旧モデルのWF-1000Xもノイズキャンセリング機能を一応搭載していましたが、今回のWF-1000XM3は初めて「本格的なANC」をこのジャンルの製品に搭載したモデルです。Jabraも良い製品を出していますが、ANCと高音質を両立したモデルで言えばSony WF-1000XM3とApple AirPods Proの一騎打ちでしょう。レビューではそのあたりも比較しますが、とりあえずWF-1000XM3の概要から。

フィッティング、イヤーピース、装着感

まずは本体ですが、横長なデザインは旧モデルから継承しながらも、耳から滑り落ちを防止するフックはなくなりました。そのため今回のSony WF-1000XM3は、イヤーピースを外耳道に押しこんで、挿したイヤーピースだけで装着するようなスタイルに変更されています。

イヤーピースはシリコン系と、トリプルコンフォートがそれぞれ3サイズ付属します。左右独立型でケーブルのないイヤホンはランニングなどエクササイズに利用する方も多いので、デフォルトのパッケージ同梱物に異なるイヤーピースが複数付いてくるのは良いことです。

付属するイヤーピースに特に悪い印象は持ちませんでしたが、個人的にトリプルコンフォートがそこまで好みではないこと、またシリコン製のイヤーピースも他社製品のほうが快適だったことから、現在はAZLA SednaEarfitやSpinFitを利用しています。イヤーピースが外れるのを防止する凹凸がありますが、耳に押しこんで安定させるその設計から、イヤホン本体を耳から外すときに、イヤーピースのみが耳に残ることがたまにありました。これは付属するイヤーピースも同様ですね。

正直に言うと、装着感は初代のほうが良かった気がします。例えばApple AirPods Proは耳介にはめるように固定して、イヤーピース自体は外耳道の入り口にそえるような感覚です。一方Sony WF-1000XM3はイヤーピースを外耳道に押しこんでそこ一点で安定させるような構造なので、イヤーピースによってはずれ落ちてきますし、全体的な装着感では大幅にAirPods Proが勝っています。

さらに耳の奥に押しこんでIEM的な装着をするNoble Audio FALCONほど耳の奥に入れることはありませんが、どちらかと言えば長時間着けていて快適なのはNoble Audio FALCONですね。

最近発売した中価格から高価格帯のTWSイヤホンは一通り試しましたが、Sony WF-1000XM3の装着感は平均、もしくはちょい下くらいでしょうか。悪くはないですが、もっと快適な製品は沢山ある印象を持ちました。

左右接続の安定化、遅延の改善

wf-1000xm3-latency

(リレー方式から、左右同時転送に変更)

まず、今回のモデルでは「左右同時伝送方式」が採用されました。プレーヤーからのBluetooth信号を左右イヤホンそれぞれに同時に伝送し、接続安定性が向上しています。ソニーによればアンテナ構造の最適化も安定性に貢献しているとのこと。

実際に付けてみると、今のところ左右の接続が途切れたことは一度もありません。というのも左右のイヤホンに別々に伝送しているわけなので、それが発生しないということです。左右間の音ずれもないので、設計がしっかりしているんだなと感じる部分でもあります。

さらに左右同時伝送方式によって、前モデルから動画視聴時の遅延を約1/4に低減させているとのこと。比較対象として遅延のそこそこあったWF-1000Xから1/4、と聞くとどうなんだ、と思いますが、確かに遅延は劇的に改善しています。YouTubeやNetflixでの動画視聴で遅延による映像と音のずれが気になることはありませんでした。

最近は左右が途切れにくいNXPセミコンのNFMI(Near Field Magnetic Induction)、同時伝送のQualcomm TWS Plus(True Wireless Stereo Plus)、Apple H1シリーズのチップなど左右独立型イヤホンで遅延や途切れが少ない技術というのはいくつかありますが、これらに近い遅延の少なさは評価できます。

WF-1000XM3が面白いのは、同時転送方式でありながらQualcomm TWS Plusの「プレーヤー本体のチップがTWS Plusに対応している必要がある」といった制限が特にないことですかね。オーディオプレーヤー、Android、Windows、iOS端末でそれぞれ試してみましたが、どのプラットフォーム・OSでも左右のずれが気になったことはありません。

もちろん「完全ワイヤレスイヤホンとしては遅延が少ない」ということなので、遅延にシビアなゲームなどをするとほんの少しの遅延は分かります。本格的に音ゲー、FPSをプレイしていて一瞬の足音も遅延して欲しくないということであれば、やはり有線をお勧めすると思います。

これらの例外を除けば、WF-1000XM3のワイヤレス接続はかなり安定していますね。日常利用する分には何ら支障はないはずです。

WF-1000XM3のペアリング・操作方法・使い方

まずはペアリング方法ですが、NFCを使う方法と、直接Bluetoothでペアリングする方法の2つがあります。

NFC接続では、スマホやウォークマンなどプレーヤー側のNFCをオンにして、WF-1000XM3イヤホン本体を充電ケースから取り出した状態で、充電ケースにタッチします。

wf-1000xm3-fnc

Bluetoothで接続する場合は、まずイヤホン本体をケースから取り出して、LEDランプが青に点滅していることを確認し、耳に装着します。

その後左右のタッチセンサーを約7秒同時押しすると、”Bluetooth  Pairing” という音声ガイダンスが流れ、ペアリングモードに移行。その後プレーヤー側でBluetooth設定をONにして、WF-1000XM3と接続するだけです。

wf-1000xm3-bluetooth-pairing

接続後の操作ですが、音楽再生の操作はR側のタッチセンサーをタップします。通話を受けたり切ったりするのもR側です。

【音楽再生・通話】

  • 再生/一時停止:1回押し
  • 曲送り:2回押し
  • 曲戻し:3回押し
  • 電話を受ける、切る:1回押し

ノイズキャンセリングと外音取り込み機能はL側のタッチセンサーを操作します。

【ANC・外音取り込み切替】

  • ノイズキャンセリングとアンビエントモード切替:1回押し
  • クイックアテンション機能ON:機能を利用する間、タッチセンサーを押し続ける

Googleアシスタントの操作は、LかRどちらに割り当て可能です。これらの変更は、Sony Headphones Connectアプリから変更できます。

【Googleアシスタント操作】

  • アシスタント停止:1回押し
  • 通知を開く:2回押し
  • アシスタントに尋ねる:機能を利用する間、タッチセンサーを押し続ける

ちなみにWF-1000XM3はDSEE HX(高音域補完機能)や、外音取り込みレベルの調整、イコライザ機能などもSony Headphones Connectから設定可能です。

電池持ちと充電時間

WF-1000XM3はイヤホン本体がフル充電で、約6時間の音楽再生に対応。充電ケースも含めると最長24時間ぶんなので、電池持ちは十分ですね。実際に使っていても、特に困ることはありませんでした。

wf-1000xm3-battery

ちなみに6時間再生というのはノイズキャンセリングONでの話なので、OFFの場合は本体のみで8時間、ケース含めて32時間再生が可能です。最近は電池の良く持つTWSイヤホンが増えてきていますが、WF-1000XM3は電池が持つ部類に入るかと思います。

それに10分充電で90分再生が可能な急速充電(クイック充電)にも対応しているので、ほとんど困ることはないかと。ケース自体の充電もType-Cポートなので、最近のAndroidスマホのケーブルで不通に充電できて便利です(ただしケーブルは付属のものを推奨します)。

対応コーデックはSBCとAACのみですが、これはTWSイヤホンのサイズ・電池の制約から来ているとのことです。本来ならapt-XやLDACもサポートして欲しかったところですが、TWSイヤホンとしては遅延も少ないですし音質も良いので否定はできません。

ANC(アクティブノイズキャンセリング)の性能・外音取り込み機能・風切り音

(外型に外音集音用のマイクが搭載されている)

「業界最高クラスのノイズキャンセリング性能」の触れ込みで登場したWF-1000XM3ですが、宣伝に偽りなしで、TWSジャンルの製品では1、2を争うノイズキャンセリング性能です。

筆者自身、ノイズキャンセリング機能を搭載したTWSイヤホンとしては、初めて”実用的”にANCを使える製品化と思います。電車内、カフェ、その他騒音のある場所で利用していると、ヘッドフォンのSony WH-1000XM3やBose QuietComfort 35 wireless headphones IIまでとは言わないまでも、このサイズを考えるとかなり効果的にノイズを打ち消してくれています。

車の通る音、人の声、あまりに大きな騒音は聞こえますが、ヒーターや換気扇といったノイズ、日常のがやがやとしたノイズは気にならなくなります。例えば通勤中のノイズが気になるとき、カフェで集中したいときなど、Sony WH-1000XM3系のヘッドフォンタイプを使うことに躊躇していた方には非常に良い選択肢になるかと。

(集音マイクは内側にもある)

AirPodsとのノイズキャンセリング性能の違いですが、まずANCを抜きにした単純なパッシブ(イヤーピースによる物理的な遮音性能)の性能は若干WF-1000XM3のほうが良いです。

イヤーピースを押し込んで耳に固定させることもあって、どちらも音楽再生を止めてノイズキャンセリングも外音取り込みもオフにした状態でエアコンやヒーター、その他環境ノイズを聴いてみましたが、WF-1000XM3のほうが良かったです。とはいってもその差はわずかですし、そもそもANC⇔外音取り込みどちらかで利用するシーンがほとんどなので、パッシブの遮音性はあまり気にしなくても良いのかもしれませんが。

次にアクティブノイズキャンセリングの性能ですが、これは消し方がWF-1000XM3とAirPods Proで違います。ざっくりいうとAirPods Proのほうが圧倒的に自然なノイズキャンセリングでした。

AirPods Proでは、キーボードが底打ちする音、マウスのクリック音、車が横を通りすぎる音はANCがオンでもそこそこ聞こえます。印象としては”不快に感じるノイズだけをばっさり切り落とす”ような感覚で、より自然にノイズキャンセリングをしている感覚がAirPods Proにはありますね。

一方でWF-1000XM3のANCは打ち消し性能自体は高いものの、ノイズキャンセリングON時はAirPods Proほど聞こえる音・打ち消す音の強弱のメリハリがそんなにないので、それが「ノイズキャンセリングをオンにしている」感を強めているような気がします。

(ヘッドフォンのWH-1000XM3に搭載されるQN1をTWS向けに最適化した「QN1e」プロセッサーを内蔵)

またWF-1000XM3はノイズキャンセリング機能以外で気になることが多いです。例えば風切り音ですが、WF-1000XM3ではANCをオンにしているとガンガン入ってくるので不快ですが、AirPods Proではまったく風切り音が気になりません。

歩いているときの音、首を振った時のイヤーピースのずれる音、息をしている音など、環境ノイズ以外で自分が動くことによって聞こえるイヤホン特有の不快な音というのも、AirPods Proではほぼないんですよね。これはAirPods Proの全体的な設計が秀逸な証だと思います。

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(WF-1000XM3のANCマイク。2つのマイクが搭載されているが、AirPods Proのように内側でユーザーが聞いている音を集音するのではなく、あくまで外の騒音を集音している)

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(AirPods Proの内部構造。ノイズキャンセリング用に内向きのマイクも搭載されている)

AirPods Proでは通気孔が圧力を均一にするよう設計されており、装着感に貢献しています。またAirPods Proでは内向きのマイクも搭載されており、耳の内側の不要な音を検知してアンチノイズ機能で取り除くので、こういった「全体的に秀逸なイヤホン設計」が、ノイズキャンセリング機能を圧倒的に自然に仕上げている理由かと。

どちらもANC性能自体が高いのは一聴すれば分かりますが、実用面で気になることが多いのはWF-1000XM3でした。筆者自身、日常シーンでAirPods Proを手に取って外出することが多いのがそれを証明しているような気がします。

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Sony WF-1000XM3の音質

(音質は表現力でSony WF-1000XM3が勝る)

音質面は、唯一Sony WF-1000XM3がApple AirPods Proに “若干” 勝っているところと感じます。

AirPods Proは中域がWF-1000XM3よりもポコッと少し前に出ている印象で、単純な会話・女性のヴォーカル域といったところはAirPods Proが聴きやすい(これは解像度の話ではなく、音域のどこが聴きやすいかという話です)と感じます。

一方でWF-1000XM3は低域と高域の表現力が高く、ロックはもちろん、ダイアナ・クラールが歌うTemptationもWF-1000XM3で聴くほうが心地よく、ディープで音楽に浸れます。

このようなことから、音楽を聴くだけなら全般WF-1000XM3がおすすめです。音楽視聴時の単純な音質という意味では、Sonyが勝っています。

冒頭で “若干” と表現したのは、TWSイヤホンの用途上、そのほかの要素が大きく関係してくるからです。基本的に左右独立型イヤホンは外で使うことが多いので、すでに紹介した風切り音だったり、歩いて靴が接地する際の衝撃音だったり、こういった雑音がWF-1000XM3を使う上で日常すごく気になるんですよね。このあたりのデメリットで、音質面のメリットはすべて吹き飛んでしまいます。

そのため、実際に使う場面を考えると、ストレスが溜まらずに良い音が聴けるのはApple AirPods Proです。単純に良い音を聴きたいだけなら有線のIEMとDAC/AMPを用意すればよいだけですし、総合的に考えるとどうしてもApple AirPods Proをおすすめするかなという印象でした。

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Sony WF-1000XM3 レビュー 総評

総合的にみると、Apple AirPods Proのほうが上なのかなと思いました。

音質面での表現力は一歩WF-1000XM3が勝りますが、ANCありきで考えたときに走行音や風切り音などマイナスとなるポイントが1000XM3には多く、完全音質重視なら有線イヤホンを使いますし、外出時は気付くとAirPods Proを手に取っている自分がいます。

ちなみにAirPods ProはAndroid OSやWindows OS機器とBluetooth接続しても動画視聴くらいであれば遅延は気にならなかったので、Appleのエコシステム製品を持っていない人にも、個人的にはAirPods Proをおすすめしたいところです。

Sony 1000XM3が出た初期は「しばらくは高音質&ANCのハイエンドTWS製品はソニーが売れ続けそうだな」なんて思っていたのですが、AirPods Proがその大部分を持っていきそうな予感です。