少し前に発売されたパイオニア「XDP-300R」を改めて買ってみましたので、レビューしてみます。
XDP-300RはAndroid OSを搭載したDAP(デジタル・オーディオ・プレイヤー)で、音楽ストリーミングアプリを楽しんだりといった汎用性が魅力のモデル。
OSバージョンがアップデートされないので見捨てられている感もありますが、発売から時間が経っていることもあってか、入門DAPとしては良さげな価格帯まで下がってきました。
音質面ではより高価な新しいモデルに強みがありますが、買い戻してみて感じたAndroid DAPの魅力を改めてメモしておきます。
XDP-300R 実機レビュー
実はPioneer XDP-300Rは以前購入して使っていたこともあるのですが、一度手放し、この度再び買い直してみました。以前はブラックを利用していたのですが、今回はシルバーを購入。
理由はいくつかあるのですが、まずはAndroid OSを搭載していることの優位性。特にサブ機利用で音楽ストリーミングもよく利用するので、個人的にDAPには汎用性を求めたいという部分もあります。
(本体は大きめ。その分ディスプレイサイズもあるので、画面タッチ操作はし易い)
OSバージョンはAndroid 5 Lollipopベースのままなので見放されている感もありますが(アップデートの関係か、最近はXDP-20や30Rなど、独自ソフトウェアで小型DAPという傾向もありますし)、しかしながらそのスペックはエントリーからミッドレンジのDAPとしては十分に感じるところ。発売時点での話ではありますが。
泥DAP製品として発売するからにはOSアップデートにも対応して欲しいところではありますが、スマホメーカーではないので、ある程度このへんはもう割り切るしかありません。
(サイド。microSDカードスロット、コントロールボタンや電源キーなど。)
最近のDAPでいうとSONY NW-ZX300を購入してこれがミッドレンジの少しプレミアムなウォークマンとしてはかなり良い音質面と沈み込みに感じているのですが、USB DAC機能が接続機器によって安定していなかったり、4.4mm5極のバランス端子は安心感がありますが、汎用性の面では現状2.5mm4極搭載のプレイヤーの方が個人的には扱いやすかったりするわけです。
(ボリュームノブは完全にスムーズなFiiO X5 3rdのようなタイプではなく、回すごとにフィードバックを感じます。一気にボリュームを上げてしまうことを物理的に防げるので、個人的にはこちらの方が好み)
またサブ機でFiiO X5 3rdも利用していたのですが、こちらは音質面より操作面できになるところがいくつかあって(ノブが軽すぎたり)、サブ用DAPとしてAndroid OS搭載のものを探していました。そこで買い戻したのがパイオニアのXDP-300R。
(3,5mmジャックの他に、2.5mm4極のバランス端子を装備。内部はESSのES9018K2M×2のツインDAC、SABRE 9601K×2のツインAmpを搭載しています。バランス端子の方は、アクティブコントロールGND駆動にも対応していますね。)
そういった経緯からサブの泥DAPとして利用しているのですが、改めて良いと思ったところもあり、気になるところもあり…ということで、個人的に思うところを書いてみます。
2.5mmバランス出力対応でAndroid OSという汎用性の高さ
改めてXDP-300Rを使い始めて思うところは、やはりAndroid OSなので音楽ストリーミングをスマホより良い環境で聴けたり、そこまで重くない音ゲーをプレイしたりという部分が良いです。
もちろん音楽ストリーミングだけでなくDSDやFLAC、MQAといったフォーマットの再生にも対応し、2.5mm4極のバランス出力やA.C.G駆動も可能、OTGでデジタル出力もできたりと、単体でもポタアンと合わせてもエントリーモデルとしては使い勝手が◎。
画面が大きく操作しやすいですし、音楽アプリのUIも割と好み。ロックレンジアジャストでNarrowに寄せて音質の変化を楽しむのも1つ。(音源によってはnarrowへ切りすぎると音切れが発生するので、個人的にはメモリ1つ狭めるのがジャストな気がします)
音質傾向に関しては少し硬めな印象。もともとこれでデジタルフィルターがSHARPだとあまりに単調に聞こえてしまうところがあり、個人的にはSLOWの設定で聴く方が楽しめるように感じます。
(ロックレンジアジャストを右ひとつ、デジタルフィルターはSLOWが個人的にはスイートスポットに感じます)
クラブブーストサウンドやあらかじめプリセットされた豊富なEQなどは一通り揃っていますが、全体的な傾向でいうと少し平面的な描き方で、沈み込む部分などはSONY NW ZX-300には及ばない音質なのかなという気がします。
ローゲインでの低インピーダンスIEM利用については概ね良いような気もする
今回XDP-300Rでは新たに「LOW 2」があるのですが、簡単にいうと低インピーダンスとか感度の高いイヤホン(IEMとか)を使う用の、さらにローゲイン設定ができるというものです。
極限に感度の高いイヤホンというとSHURE 846とかだと思うのですが、まあこれは持っていないのでiriver Astell&Kern × JH Audio のTHE SIREN SERIES「Rosie」で聴いてみました。
音量の小さいところから色々聴いてみたのですが、 JH Audio Rosieだと、音量がギリギリ聞こえる状態でLOW1だとノイズが聞こえます。ただLOW2だとこれは消えました。Rosieに関しても結構感度の良いイヤホンな気がするのですが、XDP-300Rのゲイン設定がLOW2であれば、一応鳴るにはなります。
Android DAPというところで気になるのは音量でしょうか。例えばプリインしているPioneerの純正音楽アプリであればLOW2でも十分音量がとれるのですが、音楽ストリーミングサービスでSpotifyなどを使うと、外出先で「あと少し音量が大きくできればなあ…」という、ほんの少しのところは気になります。…これもある程度静かなところなら十分なのですが、それも150~160あたりの、もう本当に最大音量近いところでやっとノレるかなという感じなので。
またこれもバランス出力モード(BLT : Balanced)ではアンバランスの時と比較して大きめに音量がとれるようなのですが、A.C.G(アクティブコントロールGND)駆動の場合は音量自体は大きくなった感じもしないので、結果的にSpotifyで2.5mmm4極のA.C.G駆動でもLOW2だと少し音量が足りないかなと思う時もあるんですよね。これは不思議で個人的にもよくわかってないです。(ちなみにバランスもA.C.Gも、LOW2では傾向としてはゲインによるノイズなんかはほとんど感じません。少なくとも私の耳では。)ただし音量はこれ以上大きくすると耳が悪くなる気もするので、これで良いといえば良いんですが、もう少しゆとりは欲しいかなというか。あとある程度音量をあげたところで音割れします。これは3.5mmアンバランスも2.5mmバランスも共通。
そんなこんなもあって、音量も多めで少し余裕をもたせたい時には2.5mm4極のバランス駆動で、A.C.G駆動は使わないことが多かったりします。あくまでストリーミングサービスの一部で、という話なんですけどね。体感で同音量の場合は高域の楽器音が少し割れている感覚もA.C.Gでは少し緩和されるような気がしていて好きなので、これはまあ良い意味でのスパイラルに陥っていると言いますか…。ACGの方がスムーズな気がしていますが、これは音量差のせいかもしれないので、もし視聴する機会があるなら比較してみて欲しいところです。
追記:A.C.G駆動は「バランス駆動で得られるパワーアップ分を、“安定性”強化に使うことにより、非常にクリアで実在感のあるサウンドが得られます。」と公式サイトに記載ありましたね。感じていた部分はあながち間違ってもいなかったのかも。
…とりあえず感度の高いIEMならLOW2は便利そうで、だた鳴らしきれているかというと微妙かもしれません。あとはRosieよりも敏感なイヤホンだとノイズや音割れがガンガン来る可能性は捨てきれないので、そのあたりはLOW2にゲイン設定して、視聴できるなら聴いてみるのが良いかと思います。
もちろんMojoに繋いだ時と比較すると圧倒的にノイズや高域で感じる音割れ部分には差があるように感じたので、価格なりと言えばそうかもしれません(それともMojoがすごすぎるのか)。
微妙と思う箇所など
サブ機として外に持ち運ぶということでポタアンをかまさない単体DAP利用がメインなNOですが、見通しの上の伸びや広さ、下への沈み込みというのはあまり得意ではなさそうな気がします。固めの表現といいますか。良さであり、好みにはまらないと少し辛そうだったり。
そうなると自宅ではポータブルアンプなどをOTGでデジタル出力して挟んでしまうのですが、外に持ち運んで使う場合はあまりスマホ+DAP+ポタアンの3つは持ち運びたくないという気持ちがあり、どのイヤホン・ヘッドフォンもある程度満足して鳴らせることは難しいような気がするのも、価格帯を考えるとしょうがないのかなという点では納得なのですが。
値段が下がってきているのは時期的には当然のことかと思いますし、エントリー〜ミドルクラスのAndroid DAPという枠を大きく超える印象もなく、かといって操作感や音質に対して価格で納得できる部分もあるわけで、つまるところこういった理由が一度手放した理由であり、もう一度買い戻した理由な気もします。
買い戻してみて
今のポータブル環境ではソニーNW-ZX300がメイン、状況に応じてサブ機にどれかを、というところなのですが、ZX300と同等の音質を求めると少し役不足な気持ちもありますし、かといってAndroid OS搭載の汎用性や2.5mmバランス端子、価格に対しての部分はFiiO X5 3rdより全体的に完成度が高いと思うところもあって、ミッドレンジのサブDAPというところでは使う時もありつつ、持ち出してみると単体では満足できない部分もありつつ。
直近のONKYOとPionnerから発売された2モデルがAndroid OSでなくLinuxベースの独自ソフトウェアという点も考えると、 今後はユーザーの声も取り入れてストリーミングにも対応した独自ソフトウェアの流れになるのかなと勝手に想像しています。
スマホとして使えるONKYO GRANBEATはともかく、今後Android DAPがパイオニアから出るかでないかというには少し気になっており、XDP-20や30Rも型番的に直系のモデルというのも微妙なので、見守りたいところ。Android OSを搭載したよさというのは、やはりありますからね。
話を戻すと、価格が下がった今なら、スマホでなく、より音質にこだわったDAPとして音楽視聴用に買うのは全然ありかなと思います。LOW2のゲイン設定も、Rosieならいけましたし、FiiO X5 3rdと比較するとレスポンスも良いので。