FiiO(フィーオ)のデジタル・オーディオ・プレーヤー「FiiO M9」を購入後、しばらく利用してなんとなく印象が固まってきたので、ようやくレビューを書いていきます。
FiiO M9は2018年に登場したDAPで、Androidをベースとしておりホワイトリストのアプリならストリーミング再生が可能、また小型で持ち運び易く、2.5mm4極端子を備えているためバランス接続もOKと、多機能なDAPです。
USB DACとしても利用できますし、個人的にも外出時のプレーヤーとしてほぼ毎日利用しているお気に入りDAP。操作性の面では相変わらずスローなSoCを利用しているのでサードパーティ製アプリの動作はもっさりしていますが、音質的には非常に満足できる製品なのでメモしておきます。
FiiO M9 レビュー
FiiO M9は、2018年に中国FiiOから発売されたデジタル・オーディオ・プレーヤー。今までもFiiO X5 3rdやX7シリーズにはAndroid OSがベースに搭載されていましたが、今回のFiiO M9もベースのOSはAndroidを採用しています。
本体サイズが60mm×106mm×13.3mm、重量が133gと、小型で軽量な設計のDAPです。ディスプレイは3.2インチ、480×800ドットのIPSスクリーンで、サイズ的に競合するのはSONY ウォークマンのNW-A50シリーズや、Astell&KernブランドのAK70シリーズあたりでしょうか。
最近iriver Astell&Kernの新しいDAPを触ってきたのですが、どの製品も大きく重くて買うのが少し億劫になりました(ついでに物理的に角が尖っているのも気になりました)。外出時に持ち運ぶDAPはFiiO M9くらい小型なサイズが個人的には気に入っていますし、ディスプレイも小さ過ぎず、タッチ操作も問題ありません。
DACチップには旭化成エレクトロニクス(AKM)のAK4490ENを2基、左右独立構成で搭載。FiiO X5 3rdにも採用されていたDACですが、他のDAPメーカーの中堅機にも多数採用歴がありますね。
出力端子は3.5mmシングルエンド出力端子と、2.5mm(4極)バランス出力端子を搭載。FiiO M6やM7にはバランス接続用の2.5mm端子がないので、DAPのみでバランス出力を楽しめるのはM9の良いところです。推奨インピーダンスは16〜300Ωで、バランス出力時は300Ω時で77mWの出力とのこと。3.5mm端子からLINE OUT、また同軸デジタル出力もサポート。
再生は最大192kHz / 24bitのPCMデータ、5.8MHzまでのDSDデータをサポート。フォーマットはAPE / WAV / FLAC / AIF / DSD / M4A / WMA / OGG / AAC / ALAC / MP3、またCUEシートにも対応しています。
USBポートはType-Cの形状を採用しており、最近はAndroidスマートフォンもほとんどType-Cポートになったので、充電ケーブルを複数持ち運ぶことがなくなって非常に楽になりました。USBオーディオ出力は~32bit/384kHz、~DSD128に対応しています。
データ転送はもちろん、FiiO M9はUSB DACモードもサポート。USB DACとしてPCに繋いでM9をBluetoothトランスミッターとして使うこともできるそうで、FiiO M9はLDACやaptX HDにも対応していますし、様々な使い方ができるのは面白いです。
ディスプレイ下のFiiOロゴはLED表示が可能で、利用モードや再生中の音源などによって赤・青・紫・黄色で表示されます。
(各LEDインジケータの色は、以下の状態を示しています。イルミネーションとしては良いですが、覚えるのが面倒なのであまり表示中の色を気にしたことはありません)
microSDカードスロットは1スロットのみ。公称で最大2TBをサポート。最大容量は多いので、個人的にmicroSDカードスロットの数や対応容量は問題なしです。むしろ気になるのは内蔵ストレージで、2GB ROMしかありません。そのため、基本はmicroSDカードに音楽ファイルを入れて持ち運ぶことになるかと思います。
クリアケースも付属するのですが、microSDカードスロット部分はくり抜いてあるので取り出しは楽です。
デジタルボリュームは公称60段階とのことなのですが、調整は0〜120段階まで目盛りがありました。他のモデルもファームウェアアップデートで120段階になっているものがあるようなので、多分FiiO M9も120段階になっているはずです。音量調節を細かくできるのは良いことですね。特にIEMだと小音量時で気になったりはするので、ありがたいです。
ちなみにハードウェアのボリュームホイールは、一目盛り音量を調節するごとにカチッ、カチっとフィードバックのあるタイプです。FiiO X5 3rdの時はボリュームホイールが軽すぎて音量の誤操作が多かったので、細かい部分も改善されているみたいですね。FiiO X5 3rdも随分安くなっていますが、こういった細かいところが改善されている点は比較的新しいFiiO M9を買うメリットかなと思います。
AK4490ENをデュアル搭載 & 2.5mm4極端子のバランス出力対応というところだけでも十分なのですが、今回のFiiO M9はワイヤレス面でもかなり多機能になりました。
まずはBluetoothのコーデックですが、LDAC/aptX/aptX HD/HWA(LHDC)/SBCに対応。以前からあったaptX HDやLDACをサポートしていますし、最近出てきたHWAも対応しています。
BluetoothやAirPlayを利用してレシーバーとしても使えますし、FW1.0.3からは「FiiO Link」に対応したので、FiiO MusicアプリはAndroidスマホから遠隔操作もできます。USB DAC + Bluetoothみたいな変則的な使い方もできるので、使っていると随分多機能なことに気付く面白いDAPです。
バッテリー容量は2,350mAhで、DC 5V2A充電時で満充電まで約2時間。ディープスリープで45日間の電池持ち、3.5mmヘッドフォン出力時なら約10時間としていますが、確かに午後から使い始めて10時くらいまでならバッテリーは持ちます。
DAPとして電池持ちが良いとは言いませんが、満充電であれば終日使えるので問題ありません。むしろType-Cポートなので(おすすめはしませんが)Androidスマホ用に持ち運んでいるケーブルとACアダプターで兼用できますし、いまだにWM-PORTを採用しているウォークマンなんかと比較するとFiiO M9のほうが扱い易かったりもしそうです。
FiiO M9の基本仕様
モデル名 | FiiO M9 |
---|---|
OS | カスタマイズ済Android OS |
プロセッサー | SAMSUNG Exynos 7270 デュアルコアCPU 1GHz |
DAC | AKM AK4490EN×2 |
FPGA | A3P030 |
LPF | OPA1612 |
BUF | OPA1622×2 |
Bluetooth | SAMSUNG S5N5C10B01-6330 |
Wi-Fi | 2.4GHz WiFi Transmission |
USB | Type-C(USB 2.0) |
Bluetooth | Ver 4.2 LDAC、aptX、aptX HD、HWA、SBC |
ディスプレイサイズ | 3.2インチ LG IPSスクリーン 480×800ドット |
ROM | 2GB |
ストレージ拡張方式 | microSDカード 最大2TB |
ボタン | サイドボタン + サイドボリュームホイール タッチスクリーン |
ヘッドフォン出力端子 | 3.5mm ヘッドホン出力端子 2.5mmバランス出力端子 |
ラインアウト出力端子 | 3.5mm ヘッドホン出力端子 (PO/LO共有) |
デジタル出力端子 | 3.5mm同軸デジタル出力(ヘッドホン出力兼用) 2WAY Type-C |
本体カラー | ブラック |
USB接続端子 | USB2.0(充電/データ転送/USB DAC/USBオーディオ) |
本体サイズ | 60mm×106mm×13.3mm |
重量 | 133g |
バッテリー | 2,350mAh リチウムポリマー電池 DC 5V/2Aを推奨 |
ボリューム調整 | 60ステップ デジタルボリューム |
推奨インピーダンス | - |
イコライザー | 10バンド EQ (±6dB), 9プリセット+カスタム |
左右バランス調整機能 | ±5 dB |
ゲイン調整機能 | ハイ/ロー |
USB DAC機能 | 192kHz/32bit |
USBオーディオ機能 | DSD64/128,DoP/D2P |
連続再生時間 | 3.5mm ヘッドホン出力時 >10h 2.5mmバランス出力時 >9h Bluetooth出力時 >30h(SBC) |
ファームウェア アップデート | 内蔵ストレージまたはマイクロSDカード内のZIPファイルによるアップデート(GPLv2ライセンス) |
サードパーティー製アプリ | プリセットのアプリ ホワイトリストのアプリ |
S/N比 | ≥117dB (A-weighted) |
全高調波歪+ノイズ | <0.002%(1kHz/10kΩ) |
周波数特性 | 5Hz~80 kHz(-3dB) |
ノイズ | <5uV |
チャンネルセパレーション | >105dB |
ラインレベル | 2V |
ヘッドホン出力仕様(3.5mm シングルエンド出力端子) | 16Ω時 ≥125mW(16Ω / THD+N<1%) 32Ω時 ≥170mW(32Ω /THD+N<1%) 300Ω時 ≥19mW(300Ω / THD+N<1%) 出力インピーダンス 2 Ω 周波数特性 5Hz~80 kHz(-3dB) 全高調波歪+ノイズ <0.002%(1kHz/32Ω) SN比 ≥117dB (A-weighted) チャンネルセパレーション >72dB ノイズ <5uV 定格電流 6.5Vp-p |
ヘッドホン出力仕様(2.5mm バランス出力端子) | 16Ω時 ≥125mW(16Ω / THD+N<1%) 32Ω時 ≥195mW(32Ω /THD+N<1%,balanced turbo off) ≥220mW(32Ω /THD+N<1%,balanced turbo on) 300Ω時 ≥24mW(300Ω / THD+N<1%,balanced turbo off) ≥77mW(300Ω / THD+N<1%,balanced turbo on) 出力インピーダンス <2 Ω 周波数特性 5Hz~80 kHz(-3dB) 全高調波歪+ノイズ <0.002%(1kHz/32Ω) SN比 ≥113dB (A-weighted) チャンネルセパレーション >98dB ノイズ <10uV 定格電流 7.07Vp-p |
対応ファイルフォーマット | DSD:DSD64,128(“.dsf”,“.dff”) APE – FAST:192kHz/24bit(MAX.) Apple Lossless:192kHz/24bit(MAX.) AIFF:192kHz/24bit(MAX.) FLAC:192kHz/24bit(MAX.) WAV:192kHz/24bit(MAX.) WMA LOSSLESS:96kHz/24bit(MAX.) AAC、MP3、WMA、OGG… |
Android OSとホワイトリスト
OSはカスタマイズが施されており、あらかじめプリセットで導入されているアプリ以外は「ホワイトリスト」となっているものだけがダウンロード・インストールできる仕組みです。つまりAndroid OSを搭載しながら、アプリ導入にはいくつか制限をかけているというわけです。
ホワイトリストに登録されているのはSpotify、Qobuz、Roon、Deezer、JOOX、Bandcamp、Sony headphones、ES file Managerなど。これ以外は今後追加されるかもしれませんし、追加されないかもしれません。ただFiiO公式で公開している情報を読んでもスペックやチップセット、価格など複合的な理由から期待薄なので、M6とM9の今後のホワイトリスト追加に関してはあまり期待しない方が良いかと。 Apple Musicに関してはプラットフォーム(おそらくここでいうSoC)のSamsung側に報告しているそうで問題解決後にホワイトリストに追加される可能性もありますが、確実にそうなるわけでもなさそうなのでやっぱり期待はしておかない方が良いと思います。
対応しているサービスに話を戻すと、ストリーミングでは有名なSpotify、FLAC 16-bit/44.1kHzでのストリーミング配信を開始しているDeezer、24-bit/192kHzの配信プランがあるQobuzもホワイトリストになっていますし、TidalやKKBOXなどはプリセットされています。いくつかのHi-Fiストリーミング配信ではAndroidアプリが対応していないためFiiO M9本体からロスレスで再生ができない可能性もありますが、この辺りのロスレス配信を売りとしたサービスには対応しているみたいですね(ちなみに、国内向けにローンチしていないサービスもあります)。
個人的にはTidalも試したことがありますが、現在利用しているのはSpotifyのみなので十分です。Spotify Premiumは最高音質がAndroidアプリが320Kbps(Ogg Vorbisフォーマット)で、FiiO M9なら少なくともSpotifyは最高音質の設定で試聴できます。
Sony Headphonesアプリもホワイトリストに追加されていますが、FiiO M9はBluetooth伝送でLDACコーデックにも対応しているので、ワイヤレスで利用するユーザーにも楽しんで欲しいということなのでしょう。個人的にはBluetoothで利用するならスマホとの接続でも良いんじゃないかと思う部分もありますが、最近はTWSはじめワイヤレス市場が盛り上がっているところですし、そういった意味では幅広いユーザーのニーズに対応している製品です。
ソフトウェア・UI・操作性
大型のアプリアイコンが2列で並ぶホーム画面、戻る操作は画面下から上にスワイプなど、小さな画面の中で極力少ないパワーで動作するように、シンプルな操作性にカスタマイズされているのだと思います。通常Android OSのUIと比較すると、かなり制限されていますね。
今回新たに搭載されているのがSAMSUNGのプロセッサー「Exynos 7270」。デュアルコアCPU 1GHzとスペックは普通に低いので、公式ページでは高速動作と低消費電力を両立と紹介されていますが、例えばSpotifyなどストリーミングサービスを起動・操作する時の動作はかなりもっさりしています。14nmFinFETプロセスのチップセットなので省電力性能はありそうですが、処理性能はやはりそれなりです。
(AndroidベースのOSはカスタマイズが入っており、至極シンプルなUI)
開発時期や製品サイクル、価格設定から低スペックのSoCが搭載されるのはしょうがないといえばそれまでですが、処理速度以外は完成度が高いので、少し高めに価格を設定してもFiiO M9は買っていたかなという気が。ただしFiiOというブランドの製品全体を見るとコストパフォーマンスの部分がユーザーに受け入れられている要因の1つでしょうし、遅いことに肯定はできませんが、否定することも難しいです。
Google Playストアからアプリのインストールが可能なFiiO X5 3rdやX7ではRockchipのRK3188(クアッドコアCPU)が搭載されており、X5 3rdもそれなりにもっさりした動作でしたが、FiiO M9もそれと同等か、下手するとFiiO X5 3rdよりもスローかもしれません。
X5 3rdの時には「Pure Musicモード」を起動すれば快適な動作でしたが、FiiO M9は特別にPure Musicモードのような機能がないようです。ただSotifyで音楽再生をしている状態で純正のFiiO Musicアプリを起動するとSpotifyの音楽再生が停止(アプリ強制停止?)するので、内部的には純正の再生アプリを起動した時にPure Musicモードのような挙動を内部的にしている可能性もあります。これはあくまで予想ですが。
そんな挙動のせいか、例えばサードパーティ製アプリであるSpotifyの動作はもっさりしているものの、純正FiiO Musicの再生アプリはキビキビ動いてくれます。そのためmicroSDカードの音楽ファイルをFiiO Musicアプリから再生メインで利用するユーザーとしては全く問題ないですが、ストリーミング利用も兼ねる場合はスマホ操作のようには高速でない点に注意しておくと良さそうです。
レシーバー機能(Bluetooth、AirPlay)
レシーバー機能も多数備えており、まずは単純なBluetoothレシーバー機能として、Bluetooth設定から「Bluetoth DAC/AMPモード」を有効にして接続すると、Bluetooth経由で伝送してFiiO M9から音出しができます。Bluetoothレシーバー機能のコーデックは現状SBCのみらしいですが、発表時の情報をみると将来的にはLDACにも対応予定(FLASH LIVE特集情報)だそうな。レシーバーとして使いたいワイヤレス派には嬉しい情報ですが、LDAC対応が確実に実現するかはレビュー時点でまだ不明。
もう一つのレシーバー機能が「AirPlay」への対応。同じWi-Fiネットワークに繋ぐかiOS端末からテザリングで同じネットワークに繋いでAirPlayモードを有効にすることで、こちらもFiiO M9をレシーバーとして使えるようになります。同Wi-Fiネットワーク経由ではうまくいかなかったのでテザリングで試してみましたが、普通に使えました(FiiO M9のWi-Fiは2.4GHz対応です)。
レシーバー機能を使うメリットとしては「スマホ内の音源ファイルを、ワイヤレス経由でFiiO M9から音出しできる」ので、M9のDAC/AMPを通して聴けるメリットはありますが、個人的に思うところだと、同じファイルであればレシーバー機能を通さずにFiiO M9本体ファイルから直で音出しした方が音質は良いと感じました。
レシーバー利用時のコーデックのせいかワイヤレス接続によるものかは不明ですが、個人的にもレシーバー機能を使う必要性がないので、普通にM9から直接音出しして聴いています。
FiiO Link(AndroidスマホからFiiO Musicアプリの遠隔操作)
もう一つ、アップデートで追加された目玉機能が「FiiO Link」。スマホ側にもFiiO MusicアプリをインストールしてBluetoothでペアリング、FiiO Link機能を有効にすることで、スマホからFiiO M9本体のFiiO Musicアプリを遠隔操作できます。
(スマホ側は「クライアント」でONにします)
レシーバー機能と違ってFiiO M9本体(microSDカード)の音楽ファイルを直接M9から再生しているので、個人的にはこちらの方が音は良いと感じます。またFiiO M9を胸ポケットにしまったまま音量調整・曲送り/戻し・再生停止などが行えるので非常に便利で、機能的にはFiiO版HibyLinkのようなものですが、以前Shanling M2sで利用したHibyLinkよりもFiiO Linkの方がレスポンスは良好で、なかなか実用的。しかもAndroidスマホのFiiO Musicアプリ内でボリューム調整をするぶんにはきっちり120段階で音量調節ができるので、一旦接続したらあとはFiiO M9に触る必要は全くありません。
少し残念なのが、Android版アプリはv1.0.7ですでに対応しているのですが、iOS版のFiiO Musicアプリではレビュー時点でまだ非対応(今後アップデートで対応予定らしい)。またFiiO M9はDLNAにも対応しているのですが、使う環境にないので無評価。
とにかく、レシーバー機能やFiiO Linkでの遠隔操作など、ワイヤレスの機能を活かして単純なDAPというだけでない様々な使い方ができるのがFiiO M9の強みかと思います。Android OSとしてだけ見れば機能は制限されていますが、そのぶん音楽再生環境のほうはしっかり機能を増やして、かつ実用的なレベルまで高めている点が良いですね。しかもこの辺りの機能はFiiO Musicアプリ内での作業なので機敏に動作しますし、使えば使うほど便利さを実感します。
FiiO M9の音質・傾向・比較
FiiO M9の音質ですが、FiiO MusicアプリからFLACファイル(〜192kHz/24-bit)、ストリーミングにも対応しているのでSpotify Premiumアカウント(最大320Kbps)でも試してみました。イヤホンは有線で2.5mm4極バランス用ケーブルも付属しているFiiO FH1、シングルエンドのみですがJH AudioのJH13V2 Pro(ユニバーサルIEM)、ワイヤレスヘッドフォンではSONY WH1000XM3で試聴。
最近は挿すだけバスパワー給電対応のお手軽USB DAC AudioQuest DragonFly Blackも使っているのですが、このUSB DACと比較すると、FiiO M9はもっと繊細で丁寧、解像度も高く感じます。DragonFly Blackの場合は中低域に厚みを感じるようになるのですが同時に荒さも感じるので、もっとスッと音楽を聴きたい時にはFiiO M9を利用することが多いですね。
特にJH Audio JH13V2 Proに関してはモニター調で芯がありながらも繊細な音色ですが、FIiO M9で聴くと解像度はそのままに各音域で綺麗にバランスよく聴けます。DragonFly Blackでは中低域がぽってりしてJH13V2 Proの良さが少し薄れるような気がして、そういった意味ではFiiO M9はモニターライクなイヤホンとは相性が良いかもしれません。
(FiiO M9 + JH Audio JH13V2 Pro + イヤーピースをCrystalline Audioのフォームタイプに換装)
このJH13V2 Proはイヤーピース選びに苦労していて、最終的にSpinfit CP100、Spinfit CP240(ダブルフランジ)、Crystalline Audio Crystal Tips(フォームタイプ)の3つに絞ったのですが、Spinfitはどちらも高域にまだ硬質な感じが取れなかったので、最終的に装着感・角の取れた音で聴けるCrystalline Audioのイヤーピースにしました。改めて思いましたがイヤーピースだけでもこんなに音が変わるので、とりあえず有名どころの製品は全部買っておいたほうが良いのかなという気もします。
今回はFiiO M9の話なのでイヤホンやイヤーピースはまた別の機会に書いてみようと思いますが、今ところFiiO M9 + JH13V2 Pro + Crystalline Audioの組み合わせはお気に入りです。FiiO M9がそのままスッと出してくれる音をCrystal Tipsが聴き易くしてくれる(と、個人的には思っている)ので、変な表現ですが「モニターライクなリスニング用途」にバシッと決まります。
FiiO X5 3rdと比較すると個人的に思うバランス感みたいなものは向上していて、特にX5 3rdで感じていた中低域の硬さがほぐれて柔らかさとスムーズな感触が増しながらも、解像度は保っているような感覚。FiiO X7と比べると濃さがFiiO M9に至っては影を潜めていますし、おそらくそういった傾向がフラットなJH13V2 Proと相性が良く感じる理由なのだと思います。
(リスニング向きなハイブリッド型のFH1と)
エントリーモデルのUSB DACアンプであるFiiO Q1 Mark IIのように分かりやすい圧のプッシュもなく適度に上品で、その傾向からかハイブリッド型の少し元気なFiiO FH1も派手に鳴り過ぎず。
JH13V2 Proと違ってFH1は低域も元気に出てくるリスニング向けですが(厳密にいうとJH13V2 Proもケーブル部分の低域調整でけっこう出ますが、ボワっとするので味付け程度に使ってます)、例えばDragonFly Blackで聴いて比較すると、明らかにFiiO M9のほうがドコドコとした中低域のしつこさがなくFiiO M9のほうがスムーズです。それでも芯は一本通っているような感覚が面白いところで、FiiOのDAPっぽい部分は感じつつ、AK70のようにふわふわ軽すぎる音色でもないので、色んなイヤホンに組み合わせて使っていたりします。
ワイヤレス接続も、ノイズなどは気になりませんでした。以前Shanlingの小型DAPfr無線接続機能を利用した際ノイズが入る不具合(原因不明)に遭遇したので、明らかに使わない機能以外はBluetooth接続や遠隔操作時に問題ないかまず試すのですが、FiiO M9に関しては今のところ問題なしです。今回はSONY WH-1000XM3での話なので、接続機器にもよるかとは思いますが。
(ワイヤレスにも強い)
色々なイヤホン・ヘッドフォンで聴いてみて感じたのが、圧をグッと押し上げるような傾向ではなく、スッと綺麗にほぐれた音色で耳に届くので、X5 3rdと比べるとFiiO M9の方が個人には好みです。サイズも小さくて持ち運びやすいため、AK70+Mojo重ねと比較しても扱い易くて良いですね。
JH13V2 Proとの組み合わせも気に入っていますし、内蔵ストレージの少なさと処理速度の遅さも致命的ではないので、2019年は外出時これ1台だけで良いかもしれません。